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催眠小説:【闇の現小説】一覧ページ
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【闇の現小説】
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ロマネ・コンティ

かなり荒れた、オレンジがかった茶色。
やや"かび"っぽく、"はつかねずみ"のようだが、それがやがて消え、
とても燻香が出る――まるで、いぶした干しぶどうの香り
味わいにも非常にあぶったような風味がある――辛口、しかし非常に濃縮感。
"誘惑"のワインではなく、非常に"厳格"なワイン。

『ロマネ・コンティ』 リチャード・オルニー 著 山本博 訳より




その夜。店は大盛り上がりだった―

なにせ、中々でない希少酒であるロマネ・コンティが出たこともあるが、
智也はその酒を、店にいる全員に飲みたいものがいたら、飲ませたのである。

めったに手も出すこともできない酒のため、
本来は店に飾るかのように置いてあるお酒が、
今、目の前で飲めるとあっては、いるメンバーも浮世立つ。

一本250万するお酒だ。
逃すものはいなかった―


智也は、そんな中、気軽にみんなに飲ませながらも、
自分の分として注いだ、いっぱいのロマネ・コンティの味わいをじっくりと味わっていた―

―ちょうど、今の俺にはいいな・・―


美帆に言われて頼んだ酒だが、(頼むと同時に美帆は、喜びながらも真っ赤になっていたわけだが―)
最初の一件目の店で、既に数杯バランタインロックを開けて来た彼には、
ターキーの甘みよりも、この渋い味が意識を明確にさせ、
より意識を、研ぎ澄ますことができた。


適度に舌に滴らせるように含みながら、
智也は克司に渡されたであろう「今あたまの中にある情報」を
咀嚼していた。




―――――――――――――――――――
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【闇の現小説】
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『何かを始めるときには、必ず “同士” を見つけ出せ。 その相手は近場にいるはずだ。
 だが、近すぎても行けない・・・ ふと・・目に留まった相手がその “同士” だ。
 世の中渡って行くには、「一人では太刀打ち出来ないっ」てことを理解しておけよ。』




いつそんな言葉を聞いたのか―
智也は、美帆を感じながら、その言葉を思い出していた。



「それで・・? ・・あなたの秘密って・・なぁに・・?」
顔を寄せた、耳元近くでひっそりと美帆は呟いた。。
肩と首筋・・耳元・・・そこに吐息がかかるように・・


「そうだな・・どこから話そうか。。」
美帆の首筋をくすぐるような吐息を感じながら、智也は・・克司の言葉を脳内に繰り返していた。。

「長い話? なんだったら、お店あけてから智也の部屋に行ってもいいわよ(笑)」
冗談交じりで、美帆は呟いた。
なにせ、智也はこういった話には綺麗に濁しながら違う話にするのだ。
今まで、店の後、一緒にアフターで行くことがあっても、大概はそこで終わってしまう。
美帆を欲しがる男性が多い中で、そんな普段の姿も、一目置く相手だった。


「・・あぁ、それなら、俺の家に来るか?」
智也は、首筋や耳元を悪戯しようとする吐息相手の耳元へ、唇を寄せて呟いた。

「えっ?!」
美帆は、慌てて肩に持たれかけていた首筋をあげ、智也の顔を見つめた―
なんだか・・・顔が赤い・・・

「ど・・・どうしたの? あなた本当に変よ? 今まで誘っても乗りもしなかったのに。」
変な人―
顔一面にそんな言葉を貼り付けながら、智也を見つめて反論しているのだが、
赤い顔をしていては、いつもの威力は半減している。


クス―

「なんだ・・、俺の秘密が知りたいんじゃなかったのか?」
智也は、いつもと違う相手の反応に密かにニヤつきながら、答えた。

「それは、知りたいわ。 ・・でも、本当にいいの?・・ 私襲っちゃうかもよ?w」

――お前が襲うのか?w――
そう内心思ったが、智也は顔にも出さずに、そのまま見つめながら答える。


「それは頂けないな・・・ 秘密話どころじゃなくなる・・・(微笑)」


まっすぐに見つめられながら・・・否定もせずに、若干淫靡に微笑みながら
そのまま話を続ける彼の様子に、日頃の彼との違いを感じて、美帆は余計戸惑った。

なにせこの距離が余計に戸惑う。

まず、顔がすぐ近くにあり (しかも彼女の好みである―)
両腕も首筋にかけている。(それも彼女がしたわけだが―)
この距離で、そんな返しをされては・・意識してしまうではないか。


が、ここはプロ。
戸惑いなど見せない会話に彼女も昇華させた。


「あら・・秘密話はちゃんと、聞かせてもらいますからねっ 目的はそれなんだから♪」
そんなことは気にしてないわよっと言わんばかりに、表情を変えて話す。


クスー

「はいはい― わかってるよ。じゃ、今日店が終わるまで、俺も店で飲むことにするよ。
 上がったら、一緒に帰ろう。」


― 一緒に帰ろう ―
美帆はなぜか、その言葉に、一瞬トロンとしかけた。


「・・・美帆・・・?」

「・・ん? あぁ、そうね。じゃ、しっかり飲んでもらおうかしらん♪」

「・・おいおぃ。さっきターキー喰らったのは誰だ。」


「・・・・店の最後まで、、いるんでしょ?・・・・ 
 今の貴方だもの・・・1本で足りるの?・・・」


―そう彼は、何かあるとこの店に来る―
そして、、長くいる時ほど、酒をかなり煽るのだ。 しかも、考えている時ほどそうらしい。


そんな時の彼は、一人にして置けない― 


彼女は、そう感じながらこれまで、彼との会話を有意義なものになるように努めてきたのだ。


「・・・あぁ。。そうだな・・・・

 (笑)・・・足らないなwww」


満面の笑みでそう返す彼――
なによ。心配しているのは私だけ? こっちは不安なんですからねっ
と美帆は思いながらも、誘惑しそうな顔で智也の顔を両手で包みながら、
口元へ近づきながら、見つめ・・・甘い声で・・・囁いた。


「じゃ・・・・ ロマネ・コンティ・・飲みたいな~♪」


美帆の得意技の甘えねだりである。
彼女がほしい男ほど、逆らい難い甘え方だと熟知して、彼女はこれまで使ってきた。
智也には・・・これまで使ったことはなかったが―
家に誘うのなら―――


「お前・・・ 俺を破産させる気か・・w」

「だって・・・ 私お持ち帰りするんでしょ? そんなに私安くないもの♪(ハート)」

「意味がなにか違う気がするんだがw」



えーちがうのーっ と 美帆は呟いてなにか続けて言っているが、
智也の耳には聞こえていなかった。
ただ、彼女の顔だけ・・・・何故か目に留まってはなれない・・・・・


また、静かにまっすぐに見つめられて、、美帆は戸惑う―


「な・・・なによっ」

「いや・・・・・、

 まぁ・・・・・・・ “じっくり” 味わう つもりだけどね・・・・・」



―ちょっ どういう意味よ?!―

「私の秘密はでませんからね?w」

「笑 誰も聞いちゃいないけど?w」

「だ・・」 美帆が続けて話を切り出そうとしていた時。
「マスター」 智也は大きな声で、マスターに声をかけた。


スッと美帆から身体を放し、傍らに立つカタチにする智也―


「はい。なんでしょう?」
ちょうど姿勢が整うと同時に、マスターは現れた。

「ロマネ・コンティ一つ。 入れてくれ」
智也は、不敵な笑顔をしながら一言告げた―




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【闇の現小説】
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男はそのまま、店を後にし、いつも訪れるあるラウンジバーに流れ込んだ。
そこは先程の店とは違って、それなりの広さを持っていた。
数名のボックスに何人かの女性、そしてカウンターにはマスターが、
しっくり飲みたい相手の対応をしている。


彼は、この店が大のお気に入りだった。


ラウンジバーに入るなり、気だるそうにしながら、カウンターで足を組み・・タバコを吹かす。。
そこで『与えられた情報』を見ながら、頭をまとめようと考えた―――のだが。
どうやらそうも行かないらしい。


「あら~ 智也~ ひさしぶりじゃない? なぁに、また荒れてるの?」
クスクスと笑いながら、店の女性がひとり・・・彼についた。


「別に荒れてねぇよ。 なんだ?いつもそんなに俺は荒れてるのか?」
「荒れてる荒れてる♪」
「嬉しそうに言うな(怒)」
「ほ~ら、荒れてる(笑)」

たくっ・・・といいながら、男はいつものワイルドターキーをロックで飲み始める。
そう、彼はいつもはターキーなど甘目が好きなのである。
では、何故あの店でバランタインだったのか?

ターキーを喉に流しながら、ふとそのことに気づき、苦笑する。
―やられてるな。

「で? どうしたの?」
「あん?」
「あん?じゃないでしょ・・。あなたがここに来るときは何かあるときよ(笑)
ネタはあがってるんだから♪」

うふっとした顔で、女性は嫌味などさらさらない顔でいう。

「・・・お前はデカか。」
「あら~? じゃ、ネタあげようか?そう・・咲灘のね~取締り役がかわったとき~、あなたは・・」
「あぁ!! もういい!! わかった。わかったから・・
せめて、気分が重いんだ。。過去ぐらい忘れさせてくれ。。。」
「クス。じゃ、おしえてくれる?」
「・・・なにをだよ。」
「・・・いまの・・あなた・・・」

「・・・・・」
男の頭に 克司の顔が浮かんだ。。
ふっ・・と男は細かに口端のみをあげて笑う。

「なぁに?その顔は・・。私じゃ話し相手にならないって言うの?
 ちょっとマスター! 私にもターキーついで!」
「おぃ。それは俺の酒だ。」
「だからよ!」

女性はこれみよがしに、ターキーのロックを一気飲みしていた。
その様子を観て男は唖然としながら見ていた。。
この明け透けのない女性に、これまで何度救われた事か・・わからない。。
すべては見せてないだろうその顔に・・
そんな事をも見せないくらいの、明け透けのない会話で相手の心を溶かす。。
そして、じんわりと染み込んでくるのだ。。


その笑顔が・・やさしさが・・相手の心にある内なる全てを打ち明けさせる・・


彼女はこの店でのNO1だった。


「・・・・・」
男は彼女をじっと眺めたまま・・暫し深い思考へと潜った。。

唖然とした顔で・・・じっと眺められて・・彼女はたじろいだ。
今までこんな様子は観たことがない。

彼(智也)は、丹精の取れた顔立ちをしていた。
日頃、悪ぶらなければ(といってもこの店でだけなのだが)、かなりモテル筈だ。
その顔立ちの男が眺めてくれば、たじろぐのも仕方あるまい。


「な・・・なによっ 一杯くらい飲んだってあなたの懐は痛くないでしょ?
 それとも~♪ 私の顔に惚れ直した? クス」


フッ -ある男の笑った顔が彼の脳裏に瞬いた-


智也は、眺め続けたまま・・・その色偽りのない眼差しのまま・・呟いた。
「あぁ・・・惚れ直したよ。美帆・・・」
「な。。。 」
女性は赤くなる。
「智也?あなた、本当に変よ? 私を口説くなんて・・・熱でもあるんじゃない?」

と、彼の額に手を伸ばそうとする彼女。。
その手を強引に掴んで腰元にひっぱる・・
「きゃ・・・」
胸元に来た彼女のあごを掴んで・・彼はもう一度呟いた。。


「綺麗だよ・・・美帆・・・」


女性は、いつにない突然の行動に半ば呆然としながら・・・はっときづいて、体制を整わせる。
そして何事もないかのように彼に接客をし始める。。
いつものように、茶化し・・相手を困らせ・・楽しめ・・和ませる。。

そんな応対を受け、その様子を彼はシビアに見ながら・・
ふとしたときに彼女の耳元で囁いた。

「今からトイレに行くから・・
 美帆もおくれてこい。 教えてやるよ、俺の秘密。」

それはずっと、何年も掛けて美帆が怪しいといいながら、知りたがっていたことだった。。
それは、智也にとっても感の良い美帆に、普段手玉に取られながらも(そうみせながら)、
面白い会話でもあった。。

探られそうで探られない・・そのキワドイ曖昧・・・そのトーク。。
時により彼女は触れてはならない場所にも触れた。
―当然、克司と関係がある内容の一部だったりしたわけだが、―

彼は明らかに機嫌が悪そうに一喝するかのような、
一見すると、人によっては喧嘩になりそうな会話でも、
彼女は穏便に面白い会話内容へとそれらを昇華してみせた。。。


・・・だから、彼は、この店に今も来る。。


男は立つと・・ トイレに向かった。
「ちょ・・ちょっと。。」
まだ返事していないじゃない・・・ 彼女はそう心の中で愚痴るが・・
暫くしても戻ってこない彼に、、しかたないとトイレに向かうのだった。


「智也~?」
彼は、壁に背中を掛けて少し俯きながら、待っていた。。
彼女の声に、そのまま目線を向ける。。

うっ・・・。
彼女はその彼の目線に弱かった。。
智也は意外に良い男なのだ。。何度も言うが、悪ぶっているが、育ちがいいのは解かる。
しかも、一代で名ある企業を創出した本人だ。
そして、柄が悪い風貌を装っているが・・・その姿はダンディでかっこよかった。。
ホストでも彼なら、軽く一位まで昇れるだろう、そう思うくらいの風貌と気立てだった。

そう、彼女の好みだったのである。


「なぁに?智也。秘密って・・♪」
ふわり・・と彼に腕を巻きながら・・問う。
「・・・秘密を知ったら、もう抜けれない。それでもいいか?」
「あ~ら、私口は堅いわよ(笑) それに、あなたの秘密って一生困らなさそうじゃない(笑)」
彼女は、いつもの癖で・・難癖のつもりでそう答えた。
彼のその秘密をネタに、食べていけるといっているのだ。

彼は、腕を回し真正面から囁く彼女に両手を顔の横につけて、真剣に答えた。。
「あぁ・・・ 一生困らない」
「えっ・・・・」
そんな答えが返ってくるとは思わなかった。。本気なんだ。。

「どういう・・・意味?」

「そういう意味だよ。」
「一生私をそばにおいておいてくれるの?(笑)」
「フッ・・・それは、お前次第。。だな。(笑)」

彼のいつもの笑顔に、彼女は安堵しながら・・耳元近くに顔を寄せて呟いた。。

「いいわ聞かせて。。」


その夜・・・彼は、最初で最後の之までの話を伝えた――――

【闇の現小説】
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洗脳。一般名「brainwashing」

飢餓状態・睡眠不足・監禁・脅迫・暴力・強姦・薬物・拷問など用いて、
精神的圧迫(罪の意識の植え付け)などの強い外圧を与えながら、
思想(脳)を改造する(洗う)ことで、思想改造の教育方法のひとつを指す

ひどい虐待方法を使い、その中で、優しく接したり、
受け入れやすい要求を少しずつ出していくことで、
思想を変えていく。

一般的には、普通の環境に戻れば思想も元に戻ることが多いと言われているが、
根底に植えられた恐怖感などの内容により、
それらのものは、深く残ることがある。



智也は、マスターと克司についての語らいを愉しみながら、
バランタインを数杯飲み干した。
その昔、軽いビール1杯で、真っ赤になっていた頃が嘘のようだ。
これも、克司の影響の一つだったのかもしれない。


「それにしても、あなたはよく克司さんに似てきましたね 笑」
「え? そうか?」
「はい、顔立ちは違いますが・・なんでしょう? 雰囲気でしょうか、似ています。」
「・・あまり、嬉しくないな 笑」
「笑」

マスターは、そういうと暫く別の客の世話に付いた。

それにしても・・・
よくこれだけの情報を、意識の中に入れられたものだ。
いつ入れられたのかも覚えていない、内容を見つめながら、
智也は思った。

―催眠。 一般的にこう呼ばれている手法が、知らぬ間に横行している現実。
世間大衆に、目に留まるようにして、暗に隠さないシンボル。その意図。
印刷物、テレビ、ラジオ各種などから用いられる、情報バランス。
多種多様の情報を流すことでの、意識反応の鈍化。

いまや、日常に使う道具や食べ物、薬などからも
人を奴隷化&搾取しようとせんがためのものまであるといわれているが・・

まぁ、それはいい。


問題は、「今」これらを渡された事実だ。


『満足いく結果が出せて、世の中に飽きたなら・・ 「俺」を思い出せ。
 飽きさせない「世界」を「思い出させて」やるよ。』

飽きさせないというか・・・あんた。。
これは、何に挑戦状贈れって言ってんだ?
俺が今の地位についたのも、あんたの差し金かと思えてくるぜ。

ニヤニヤと頭の中で、男は笑っている。

あ~、たちが悪い。
こういう顔立ちを見るときは、大抵、こちらが困ることを相手が言う時だった。
ほんとたちが悪い・・・。

ただの何も物事をあまり知らないであろう、好青年を捕まえておいて、
―好とつけるあたり、この男の性格が出ているのだが。
夢も希望も打ち砕き、その上で、うまくいく方法を叩きいれたかと思えば、
これだ。


―あんたのお蔭で、成功できたと思っていたんだがなぁ~・・・・
 これじゃ、あんたの駒じゃないか。
 まぁ、飽きはしないがね 笑


かつて「バランタインの氷」と呼ばれた男は、心の中で愚痴った。


・・・それにしても、いつ洗脳されたのだろう?
・・・・いや、マインドコントロールだろうか?


過去を振り返って、気づいたことは、
暫く、克司さんにべったりと暮らしていたことだった。


『普通に家に泊り込めばいい 笑』

そういって、鍵を渡したあいつ。
家賃も浮くしと、家をいつしか取っ払って・・・入り浸っていた。
そのお蔭で、お金には困らなかったのだ。
飲みにも連れて行ってもらえたし、(当然、この店である)
かなり愉しかったのを覚えている。


・・・家を取っ払う時点でな~・・・入れられているよな~・・・・


飲みながら、今更ながらにそう思うが、
まぁ、そのお蔭で助かった記憶も深いため、
なんともはや、複雑な気持ちになってくる。。


毎夜毎夜、そういえば・・練習だといって、
色々、教えられたっけ・・・。


カラン―


飲み干したグラスを、顔の前まで持ち上げて、グラス越しに氷を見る。

・・・このグラスでさえ・・、俺にとっては「道具」になっちまうんだもんな・・・

氷を見ている目は、その昔、
―『そうだな。お前次第さ。どう使うか、伏せるのか。暴走させたら身の破滅だな(笑)』
と語った、男が見ていた、グラスの氷を見る目と同じだった―――




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「それで、マスターはあいつと連絡とっているのか?」

あいつ。その言葉で通じるかどうかも、かなり昔過ぎてわからなかったが、
男はそう問いかけた。 あいつとは当然、克司のことである。

「いえ。あれっきり、ここにも訪れなくなりました。どこにいったのやら。」
そういうと、ちょっと寂しそうな困ったような顔をした。

「実を言うとこの店、彼のお蔭でつくれたようなものなんです。」
「え? それは初耳だな 笑」
「そうでしょうね、あの人はそういうことは何も言わない人ですから。」
「・・そういや、マスターとあいつは、どういう経緯で仲が良かったんだい?」

そう聞くと、マスターな困った顔をした。

「聞いちゃまずかったか?」
「そんなことないですよ。ただ・・どこから話せばいいのかと考えてしまっただけです。」
そういいながら、洗い立てのグラスを拭き終わると、
過去を思い出すように、語り始めた。

その内容は、意外なものだった。

元々、彼(克司)とマスターは同級生なのだという。
だが、一時期、克司が遠く離れた場へ行くことになり、逢うことも無くなったとか。
高校生の終わりごろ、転校して戻ってきた彼は、まるで別人のようになっていたのだという。
昔は、明るくて気さくで、周りを引っ張っていくようなタイプだった彼が、
その頃には、一人、影をもつような印象を持つ、落ち着いた青年へとなっていたそうだ。

「今思えば、誰よりも先に「大人」になってたのかもしれないですねぇ。」

カラン―

違う。それは、あいつが「新たな知識」を「与えられた」からだ。
俺にも渡した、あの知識を――――


『智也よ。 もしこれをみんなが知ったらどう思う? 当然嫌がるだろうな。
 だが、賢く使えるやつが知るのなら・・・ これは「財産」になるんだよ』


「財産・・ねぇ・・・・・」


「・・はい?・・・」
「あ、わりぃわりぃ、独り言。
 でも、そんなに性格って変わるものか?」
「それなんです。彼に何かあったんじゃないかと思ったんですが、特に何もないんですよ
 そういうことがなければ、あんなに変わるとは・・・思えないんですがね。。」
「隠すの上手そうだしなぁ・・・」

カラン―


「あはは、そう言われればそうですね 笑
 まぁ、上手に隠されていたのかもしれませんが、
 あえて触れなかったことが、良かったのかもしれませんね。傷口開くよりかは 笑」

酒のおかずに、克司の会話をしながら、
智也と呼ばれた男は、克司の言葉を思い出していた。

『満足いく結果が出せて、世の中に飽きたなら・・ 「俺」を思い出せ。
 飽きさせない「世界」を「思い出させて」やるよ。
 本当に飽きたら、「店」に行くんだな。
 そこで、「俺」は『待っている』――――』


―待っている。か。

あんたが言ったことは、「これ」だったのかよ。この記憶かよ。
よくもまぁ、深く入れたもんだ。洗脳か? 克司さんよ。

頭の中で、彼が笑っている。

バランタインを飲みながら、男はマスターとの会話を愉しみながら、
新しく「与えられた」情報をうっすらと眺めていた。。




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